実はこのアリアンツアレナは僕のホームスタジアムになる可能性を秘めていました。
昨年、僕はこのミュンヘンに赴任する辞令を携え、ドイツに降り立ったのです。
事務所を開ける予定の物件を見て回ったり、バイエルン州の投資庁の人に会ったり。
もちろん、自分が住むアパートも探しました。
このアリアンツアレナへ繋がる地下鉄の沿線沿いの地区に絞り込み、物件を探していました。
ところが、ちょっとした情勢の変化から、ミュンヘンへの進出は中止になり、僕はフランクフルトに住むことになります。
今ではすっかりフランクフルトに魅せられ、多くの友人に恵まれ、アイントラハトという愛するクラブもできました。
僕は日本でずっと大分トリニータを応援してきましたが、東京に住んで、大分を応援するという状態でした。アウェイを中心としたサポーターでした。
自分が住む場所に愛するクラブがあるという幸運はアイントラハトに初めて教えてもらいました。
という状況から、バイエルン戦です。現在のブンデスの上位を争うチーム同士の一騎打ちです。
これは遠征行かないとまずいでしょう。ホームゲームも素晴らしいですが、元々遠征はお手の物です。札幌との試合に日帰りで行った事だってあるんです。
さて、遠征しようと思い、チケットを手配しようとした時に、問題発生です。
チケットがありません。
もちろん、定価では買えないかもしれない、という覚悟はしてました。
ですが、転売サイトを見ても、全くありません。
クラシコですら、CL決勝ですら、法外な値段を出せば手に入るサイトなのに。
しばらく時間がある度にチェックしていたら、時折売りに出ている事が分かりました。
それも、1枚ずつ。
折角ミュンヘンまで観に行くのにノンさんと別々はちょっと切ない。
また、7万人近い人が出入りする中で落ち合うのもめんどくさそう。
2枚で出るチケットをひたすら待ちました。
一瞬、3枚で出た時があり、もう3枚で買ってしまえと購入しようとしましたが、必要事項を入力している際にまさかの売り切れ。
このサイトのシステムは、最初に”購入”という最終確認ボタンを押した人が買えるシステムのようです。
もう半分諦めかけていた火曜日の夜、ずっとサイトをモニターしてもらっていたノンさんから出張先のホテルで泥酔していた僕に電話が入ります。
『1枚ずつだけど、同じブロックから3枚出ている。』
あわてパソコンを立ち上げ、1枚ずつ出ていた3枚のチケットのうち2枚を確保。
購入確定すると座席の番号が分かるのですが、なんと、隣り合わせ。
無事、隣り合わせたチケットを入手しました。
スタジアムのチケットブースで無事受取り。
一応、定価のようです。50ユーロと印字されてました。
いままでのブンデス観戦で一番大変なチケットでした。
ドルトムントとシャルケのルールダービーですら楽勝で買えたのに(高かったけど)
チケットの手配もできたので、いざ、ミュンヘンへ。
ちょっとここの所出張が続いていて、さらに来週も月〜金で出張という過密日程のため、クルマの長距離ドライブはやめ、のんびり電車で行く事に。
フランクフルトの中央駅からミュンヘンに向け出発。
電車は日本で言う新幹線、こちらではICEと言います。
割引カードがあったり(年会費あり)、早割があったりで上手く買うと安く行けます。
フランクフルトからミュンヘンまでは約3時間半。映画を見たり、本を読んだりとリラックスすることができました。電車にしてよかった。
ミュンヘンに着いて、ホームに降りるとかなりのアイントラハトサポーターが駅に到着していて、さらにそれをかなりの人数の警官隊がお出迎え。
警備が凄い。まぁ、あのロクデナシ共を制御するにはある程度やむなしか。
そのロクデナシたちは、トラム(路面電車)をジャックして、窓に横断幕とか貼りまくってます。アイントラハトのチャントが聞こえて来たので見たら、おかしな電車が走っていました。そして、中ではビールで大宴会。車両中央に酒屋の様にビールのケースが積まれていました。
マリエン広場に行っても気づけばアイントラハトなおじさんが。
街のあちこちにアイントラハトのサポーターが居て、間違いなく呑んだくれていて、お互いがアイントラハトの応援と気づくと、サムアップです。フランクフルトに居る時とはまた違うこの旅先での一体感。アウェイの醍醐味でもあります。
みんな飲んだくれてるんだから、僕らも飲もう、とマリエン広場前のレストランに。
お約束のバイスビアとバイスブルストです。ミュンヘン、ミュンヘン。
いつまでも飲んでばかりもいられないので、スタジアムへ。
マリエン広場から地下鉄で20分くらいでスタジアム最寄り駅に到着です。
先ほどのチケットを受取り、手荷物検査を受けてからスタジアムに。
時間があったので、スタジアム内のバイエルンファンショップに。
これは驚きました。今までのファンショップの中で一番でかく、品数も多かったです。さすがは金満クラブ。
戦利品として集めているアヒルシリーズを2体とフランクフルトの飲み屋でお世話になっている方がバイエルンファンなのでお土産を購入。
座席は50ユーロのカテゴリー2のチケットながら、3階席。
ちょっとした登山くらい階段を登り、座席へ。
3階席ながら、1列目だった事もあって、非常に見やすい。
アイントラハトのサポーターの近くの席だったら良いなぁという甘い期待も叶わず、ブロック的には思いっきりバイエルン側。上の写真の左側がバイエルンゴール裏です。
で、スタジアムのどこにアイントラハトのサポーター、すなわちアウェイ席があるのか、ここからでは全く分からなかった。
試合が始まってもどこにいるのか分からなかったため、全ての応援グッズ(旗とか太鼓とか横断幕とか)の持ち込みを禁止されていた模様。
なので、トラムに貼っていた横断幕も持ち込めず。
試合前の練習が始まり、目の前に(といっても3階なので遠いですが)ロッベンが。
全体練習が始まるまでずーっとリフティングしてました。
昔のマラドーナも、試合前の練習はリフティングだったようです。関係ありませんが。
我らが乾くんも先発です。
試合前練習ながら、バイエルンの練習に釘付け。
さすがはスーパースター軍団、パスゲームの早さと密度が違います。
もの凄い密集で早いプレスがかかりまくっている中をそれでも面白い様にパスが通ります。
なかなか攻守交代しない。
中央にフリーマン(常にボール保持側のチームでプレーする人)が居て、だれだか分からなかったですが、この人が超絶上手かった。どんな苦しい状況で受けても絶対にボールを失わない。
片や反対サイドのフランクフルトを見ると、スペースは1.2倍くらい緩く、それでもパスが繋がらない。これは厳しい試合になるぞという寒気が。
スタジアムには71000人が入り、満員。
試合開始から5分くらい、アイントラハトは全くボールに触らせてもらえず、次から次へとライン裏に飛び出してくるバイエルンの選手たちにヒヤヒヤ。
昨日観た、バルサ90%ポゼッションのバルサ対セルティックみたいになるんじゃないかと焦りながらも、結果試合に勝ったのはセルティックなので、一瞬のチャンスを逃さないで欲しいと思っていました。
ところが、10分過ぎから様子が変わります。
持てているのか、持たされているのかはさておき、アイントラハトが攻め込む時間が多くなりました。
バイエルンの切れ味鋭い攻撃を凌ぎながら、何回か決定機も作りました。
ここで決めておきたかった。
ジャイアントキリングの条件がいくつかあると思いますが、前半のチャンスを沈めていれば、違った試合展開が望めたんじゃないかと思います。
何度か押し込んだ時間帯の後、エアポケットのように穴があき、カウンターから前半終了近くにリベリに押し込まれ、1失点。
もったいなかった。
バイエルンは多くのお客さんが入っている物の、ゴール裏は元気があるとは言えない。
実際に飛んだり声出したり、はペナルティエリアの幅よりも狭いあたりのブロックにしか居ない。
正直、大分のゴール裏の方が頑張ってる奴多いのではないかと思ったくらい。
迫力も無かった。
たぶん、2階か3階の黒い所あたりにアイントラハトのサポーターが押し込まれていたと思います。
応援グッズを取り上げられているのでどこに居るのか分からなかった。
でも、声は良く出ていて、リードもメリハリのあるアウェイをよく判っているリードでした。
さすがです。
後半になり、PKで追加点を入れられ、結局2−0で敗戦。
しかしながら、ここ数試合の低調なできではなく、チームの状況は上向いていると感じました。
もちろん、今日のバイエルンがトップギアに入っていたとも思いませんが。
でも、もし先制していたら、きっとバイエルンもトップギアに入れ、本気のバイエルンが観れたのではないかと思うと、ちょっと悔しい。
乾は応対する相手がラームやロッベン、リベリと蒼々たる面々ながら、守備時も大きな破綻は無く、しっかりやり合ってたと思います。ロッベンとの1対1なんかは迫力ありました。
ラームには殆ど仕事をさせておらず、合格と思います。
攻撃時もさすがのパスさばきで、何度もチャンスを演出してました。
一時期よりもいい状態と思います。
全ての試合が重要なことは言うまでもありませんが、ここからアウグスブルグ、シャルケと続く試合は、前半戦のキーポイントになると思います。
アウグスブルグは下位ですが、ドルトムントとの試合を見る限り、点差ほど悪いサッカーではなく、非常に要注意と思います。ドルトムントを多くの時間、押し込んでました。
そしてシャルケのアウェイ。これも厳しい戦いになると思います。
ここをどう乗り越えて行くかで今年のアイントラハトの現実的な目標が、優勝なのか、CLなのか、ELなのか、もっとしたになってしまうのか、が分かるかもしれません。
シャルケ戦もチケットは手に入れています。
まだまだ成長の余地のあるこのチームは本当に楽しみです。
乾くんも、もっとやれると思います。ボールタッチの回数だってまだまだ増やせる。
乾くんが中央へ流れて来た時の攻撃は本当に可能性を感じます。
代表に行き、戻ってくるのを楽しみにしてます。
そしてバイエルンはやっぱり凄かった。ロッベンとリベリは別格にしても、後半早々にクロースが下がったり、ミューラーが途中から出て来たり、と信じられない選手層。
そんなバイエルンを相手にしたとしても、結果は本当に残念でした。
決めるべき所を決めておけば、という悔いの残る試合でした。
次回、ホームで迎える時には借りを返しましょう。
写真のせ忘れなので追加。
白いのと赤いのありました。