ブンデスリーガ2部観戦 FC St. Pauli 対 SC Paderborn 07
ザンクトパウリはハンブルグに本拠地を置くクラブで、ドイツではバイエルンに次ぐ人気クラブとの事です。世界中にサポーターが居るという話も聞きます。
成績は乱高下という言葉がふさわしく、今年は2部。
そして、あの特徴的なドクロのマークがクラブのシンボルと言う、ちょっと不思議な存在。
スタジアムも、ドイツにしては珍しく、収容人数も少なく、決して立派なスタジアムとは言えない。収容は25000人も入らない。
この不思議な魅力を振りまくクラブがどうしても気になっていて、今年の最後はここと決めていました。
シーズンを通じて成績に注目していたため、いつしか応援の対象となり、今シーズンはアイントラハトとパウリを応援していました。
大変だったのはチケットの確保。
ドイツに来て、チケットの取り方だけは上手になり、というか、誰でも取れるのですが、インターネットのチケット売買サイトで、人気に合わせてプレミアムを払い、チケットを入手していました。
もちろん、満員にならないスタジアムでは、ほぼ定価や、時には定価割れで入手でき、人気チームの好カードは非常に高いプレミアムが必要になります。
この、パウリのチケットは高かった。
20ユーロのチケットを約200ユーロで落としました。
この値段は、ドルトムントーシャルケのルールダービーの値段とほぼ同じ、今年の最高価格です。
そのチケットが、届かない。だいたい、人気カードほどギリギリに届く物なんですが、全く届かない。
既にブレーメンに旅行に出た後でもまだ届かない。
結局、前日の朝にようやくホテルに届きました。
またこのチケットがオシャレ。今まで見たサッカーのチケットで一番。
待ち侘びたからそう思ったのか?
チケットをようやく入手し、スタジアムへ。
スタジアム近くのパブはこんな感じに。
フランクフルト並みに飲んだくれてる人が居ます。これは期待できる。
この街もダメなイカす街では?
スタジアム入り口には掘っ建て小屋のような売店が。
DJブースがあり、ガンガンクラブっぽい音楽がかかり、朝から踊ってます。
なんか、今までに行ったスタジアムとは全く異なる独特な雰囲気。
なんと言うか、自由。
この横では、サポーターが自分たちで福引きをやっていて、恐らく活動資金を捻出しているんでしょう。なんか、自由。
スタジアム正面にはオフィシャルショップが。
店の雰囲気はアパレルの店みたいで、いちいちシャレてる。
店内はかなりの人。
あまりに寒かったため、うちもジャージを購入し、着込む。
バックスタンドを裏から見たところ。
仮説ではない。ガチのバックスタンドと、スタジアムグルメ(日本風に言うと)の売店。
工事現場にしか見えない。
こちらはメインスタンドの入り口。
今日のチケットはメイン側でした。
心なしか、ちょっとお金持ってそうな人や、スポンサー筋っぽい人が多かった。
中の通路にもファンショップがあった。
なんと言うか、カッコいい。何となく、アートというか。
ただの落書きなんだけど。
メインスタンドからホームゴール裏方向。
バックスタンドはご覧の通り、仮設もいいとこ。
今回のチケットは余程かき集めるのに苦労したらしく、2枚で注文したけど、二席は全然別でした。
1枚は最初の写真の場所で、メインスタンドの上の方でピッチはよく見える場所と、この場所。
前から2列目だけど、ホーム側のゴールは手すり越しにしか見えない。
ブンデスの競技場はどこも見やすいんだけど、このスタジアムは…。
ただ、それが何か味に感じてしまうから、憧れとは恐ろしい。
ゴール裏はこんな感じ。下の層だけが立ち見。
一応サポーターの中心のようだけど、思ったほどは大規模ではなかった。
バックスタンドも下層側は全て立ち見。上層の屋根のあるところは椅子席。
バックスタンド
アウェイゴール裏も中央付近までパウリ側の立ち見席。
ゴール裏の手前半分がアウェイ席。当然立ち見。
紙吹雪を撒きながらの発煙筒は危険だと思います。
パウリのサポーターがこの大一番でどういうサポートをするのか非常に興味がありました。
でも、思ったのとは違い、何か普通。
なんだけど、言葉でどう伝えていいのか判らないのですが、地獄の鐘と呼ばれている、荘厳な鐘の音が鳴り響く中、紙吹雪が舞い、バックスタンドの2階席からはロウソクのような、おそらくライトを点している中、選手が入ってくるのを見た時に、何故かちょっと泣きそうに。
アイントラハトみたいに、誰がどう見ても大変な苦労をして、想いを伝えている訳ではないのに。
なんか、フットボールの文化というか、なにか目に見えない重たい物を見せられているような感じでした。
この不思議な感覚は、写真では絶対に伝えられないと思いました。この後、試合が終わるまで僕がカメラのシャッターを1枚も切っていなかった。
このクラブは明らかに他のドイツのクラブとは異なります。
ドイツはどちらかというと、Jリーグ風の統率応援で、しかしながら、観客の数、声量が半端ないので、もの凄い雰囲気の中試合が行われます。
パウリは、どちらかというと、ゴール裏のサポートなんかは思っていたよりも迫力が無かった。
正直、ちょっと拍子抜け。
しかしながら、メインスタンド以外の全周を立ち見席が囲み、そこに密集しているあちこちのサポーターから、自然発生的に起きる歓声、拍手、怒号、そしてチャントは、通常のドイツのスタジアムの雰囲気とは少し異なる物の、何かフットボールの文化を感じるスタジアムでした。
そして、これが一番説明に苦しいのですが、とにかく居心地がよかった。
アイントラハトの雄々しい感じの雰囲気とも違うのですが、フットボールを感じるというか、うまく説明できないのですが、ずっとココに居たい、という気持ちにさせられました。
1試合だけでは判断できないし、きっと何か理由があるはず。
また、ハンブルグに来たい、そう思いました。
うまく言えませんが、きっと、自分が生まれ育った街に、こういうクラブがあったら幸せなんだろうな、そう思いました。
もう一つの特徴は、ドイツのスタジアムはどこも警官隊の警備が凄いのですが、このスタジアムには警察がほとんど居ません。
そして、ドクロのマークとか、ライダースを着たサポーター達からのイメージから、非常に暴力的なクラブと勝手に思っていましたが、この試合だけしか見ていませんが、スタジアムからそういう暴力の匂いが極端に感じられなかった。
恐らく、自由を愛していて、警察の関与を拒否しているんだと思います。
残念ながら試合には圧勝した物の、デュッセルドルフが引き分けたため、入れ替え戦には進めず、それを挑発したアウェイのパダボンサポーターに突っかかっていった人が二人だけ居たが、柵を乗り越えた瞬間にセキュリティが羽交い締めにし、引きずり出していた。
ドイツのサポーターは比較的自由を与えられていた印象だったが、最もルール違反に厳しい対応を取っていた。
警察の関与を拒否し、そのかわり揉め事が起きないように、自治を徹底的に行っている、そういう印象を受けました。
聞けば、ドイツで最初にスタジアムから差別と暴力を排除しようと宣言したクラブだそうです。
きっと、排除する、と宣言するには、沢山の悲しい歴史があったのではないか、そう思わされました。
正直、この雰囲気がなんなのか、この居心地のよさはなんなのか、判らなかった。
なので、来シーズンもまたここに来ようと思いました。
試合は、パウリもパダボンも試合に勝利し、デュッセルドルフの結果を待つのが大前提。
緊張感のある立ち上がりになりました。
10分ほど経った時に、アウェイのパダボンゴール裏がざわつきました。
目の前だったのでよく見えたんですが、試合と関係のないところで喜んでいる。
恐らく、フッセルドルフが先制されたんだと思います。
この時点で、結果は判らないが、この試合には勝てると思った。
通常、他会場で点が入ると場内のモニターに映し出されます。
いつもそうなのか、この日に限ってなのかは不明ですが、パウリのスタジアムでは他会場の途中経過は全く流れませんでした。正解だと思います。
自力での入れ替え戦順位獲得が望めない以上、目の前の試合にベストを尽くし、試合後の結果を待つしか無いと思います。それが出来なかったパダボンには、目の前の試合に勝つ事はできない。
この後、結局5−0の大差でパダボンは破れますが、これは選手ではなく、目の前の試合に集中できなかったサポーターの責任と思いました。
残念ながら入れ替え戦には進めなかったのですが、これも不思議だったんですが、このクラブ、サポーターには、入れ替え戦だなんだ、という物が見えていなかったように感じました。
かといって、遠い将来だけを見ている訳ではなく。
きっと、スタジアムに自由があり、フットボールを楽しめれば、短期的な順位や1部だ2部だは関係ないのではないか?そんな風に感じました。
でも、同じような経験を僕らもしましたが、そんな心境には到底同意できず、きっと何か他の理由があるのではないかと、考えれば考えるほど謎は深まっていきました。
ということで、とても不思議なクラブです。このクラブは。
でも、もし機会があるならぜひ体感してみてください。
きっと一人一人違った印象を持つのではないかと思います。
僕も、答えを探しにまた来てみようと思います。